本が好き!
その想いが
誰かを救う
ケアになる

ビブリオケア|BIBLIOCARE

本をきっかけに人と人がつながり、

日常のなかで自然と支え合える社会へ。

それが「ビブリオケア」の目指す未来です。

ビブリオケアとは?

ビブリオケア(BiblioCare)とは、本が好きという気持ちを誰かへの寄り添いに生かし、専門的な資格がなくても参加できる、日常の支え合いと居場所づくりを目指すケアの考え方です。

ビブリオケアが重視するのは、本を読むことによる心理的な作用だけではありません。誰かのために本を選ぶ行為、自分のために選ばれた一冊を受け取る体験、本を介して思いを分かち合う関係にも、ケアの可能性を見いだしています。

本を活用した支援には、古くからビブリオセラピー(読書療法)という取り組みがあります。医療や心理支援だけでなく、教育や図書館などでも実践されてきました。一方で、「セラピー(療法)」という言葉には治療の意味合いがあり、実践者に求められる専門性についても議論されてきました。

ビブリオケアは、こうした実践を尊重しながら、専門的な治療とは異なる、誰もが日常のなかで参加できる「ケア」という選択肢を広げるものです。

その実践の一つが、誰かの悩みに寄り添う本を参加者が選び合う読書イベント「選書会」です。

ビブリオケアは、図書館や書店、地域の居場所などに本を介したつながりを育み、孤独・孤立の予防を目指します。さらに、医療や福祉と地域活動をつなぐ「社会的処方(Social Prescribing)」の受け皿となる地域資源としても発展させ、誰もが自然に支え合える社会を目指しています。

※ビブリオセラピー(BiblioTherapy)とは、主に心理の専門家が、患者の悩みや症状に合わせて適切な本を処方する手法です。本を読むことで自己理解を深めたり、心の痛みを和らげたりする「治療・支援」を目的としています。

※社会的処方(Social Prescribing)とは、イギリス等で広がる、薬に頼らないケアの仕組みです。医療機関が患者に対し、地域のコミュニティや文化活動への参加を「処方」することで、孤立を防ぎ、心身の健康を取り戻します。

01
「本が好き」が、
誰かへのケアになる

「この本が好き」「誰かに伝えたい」。そんな純粋な気持ちが、誰かに寄り添うきっかけになります。

本を選ぶ人も、選んでもらう人も、特別な資格は必要ありません。本への愛情や、誰かを思う気持ちから始まるのがビブリオケアです。

02
本が苦手でも、
思いやりは届く

誰かが自分のために真剣に考え、一冊の本を選んでくれる。それは、心を込めたプレゼントを受け取るような体験です。

本を読むことだけでなく、選ぶこと、受け取ること、思いを分かち合うことにも、ケアになります。

03
寄り添いの居場所を、
散りばめていく

図書館や書店、地域に本を通じた寄り添いの場を増やし、誰もが自然に支え合える社会を目指します。

そこで生まれた選書や思いやりの記録を収集・共有し、社会のケアの財産として蓄積。同じ悩みを抱える人にも届けることで、孤独・孤立の予防につながるセーフティネットを広げていきます。

ビブリオセラピーとの違い

本を通じて人の心を支える取り組みには、100年以上の歴史があります。その代表的な考え方が「ビブリオセラピー(Bibliotherapy/読書療法)」です。

19世紀には欧米の病院で読書が療養に活用され、1916年にはアメリカの作家サミュエル・マコード・クローザーズによって「ビブリオセラピー」という言葉が使われました。その後、第一次世界大戦中の傷病兵への支援などを経て、医療や心理支援、学校教育、公共図書館などへと実践が広がっていきました。

現在もイギリスの「Reading Well」では、医療・福祉の専門家らが選定に関わった本を公共図書館で無料で借りることができます。

一方、その長い歴史のなかでは、誰が本を「処方」するのか、実践者にどのような専門性が必要なのか、その効果をどう検証するのかといった議論が重ねられてきました。

私たちも当初、本を通じた寄り添いを「ビブリオセラピー」と呼んでいました。しかし、選書会やひきこもり支援団体、NPOなどとの活動を通じて、自分たちが大切にしているのは、治療とは異なる価値なのではないかと考えるようになりました。

誰かの悩みに耳を傾け、その人のために一冊を選ぶ。選ばれた本を受け取ることで、自分を気にかけてくれる人がいると感じる。たとえその本を読まなくても、自分には合わないと感じても、そこには人と人が寄り添うことの価値があります。

病気を治すことと、生きづらさや孤独を抱えながらも、安心して暮らせるように支えることは、必ずしも同じではありません。

悩みと向き合うこともあれば、ときには距離を置いたり、逃げたりすることもある。私たちは、そんな一人ひとりの生き方に寄り添うことも、ケアの大切な役割だと考えています。

厚生労働省の調査によると、精神疾患を有する外来患者数は2002年の約224万人から2023年には約576万人となり、長期的に増加しています。また、文部科学省の調査では、2024年度の小中学校の不登校児童生徒数が約35万4千人と過去最多になりました。

こうした数字からも、心の不調や学校での生きづらさなど、さまざまな困難に向き合う人々の存在が見えてきます。

日本には国民皆保険制度があり、比較的少ない自己負担で医療を受けられる環境が整っています。これは社会の大きな強みです。

私たちは、こうした医療や福祉の制度を大切にしながら、日常のなかで人と人が支え合う「ケア」の価値にも、もっと目を向けたいと考えています。

専門的な治療や支援が必要なときには、安心してそれらを利用できること。そして、病気かどうかにかかわらず、誰かに悩みを打ち明けたり、好きなことを通じて人とつながったりできること。

医療や福祉の充実とともに、市民一人ひとりがケアの担い手になれる社会を育てていくことが、私たちの目指す方向です。

こうした考え方に通じるのが、海外で発展してきた「社会的処方(Social Prescribing)」です。イギリスでは1980年代から地域で先駆的な実践が生まれ、2019年には国民保健サービス(NHS)の長期計画にも組み込まれました。

社会的処方は、医療・福祉と地域の活動をつなぎ、人との交流や文化活動などを通じて健康や暮らしを支える取り組みです。私たちは、本を介した寄り添いも、こうした地域のケアを支える活動の一つになれると考えています。

本は公共図書館で無料で借りられる、身近な文化資源です。経済的な負担を抑えながら、誰かに寄り添うきっかけをつくれることも、本の持つ大きな可能性です。

そして、ビブリオケアのもう一つの着想源となったのが、日本で発展してきた「推し活」の文化です。

好きなものを応援し、その魅力を誰かと分かち合う。推し活には、日々の暮らしに楽しみや張り合いを生み、人と人をつなぐ力があります。

私たちは、その「好き」という気持ちを、自分自身の楽しみだけでなく、誰かへの寄り添いにも生かせるのではないかと考えました。

本を選ぶ「選書」もまた、アートのように一人ひとりの感性や思いを表現する行為です。同じ悩みを聞いても、選ばれる本は人によって異なり、そこには選ぶ人の経験や価値観、相手への思いやりが表れます。

私たちが目指していたのは、本による治療ではなく、本が好きという気持ちから生まれる、日常の支え合いでした。

本を読むことだけでなく、選ぶこと、贈ること、受け取ることにも、ケアの価値を見いだす。そして、その寄り添いを一度きりの出来事で終わらせないことも大切にしています。

学校や職場、医療・福祉の相談窓口、地域の居場所など、人が悩みを打ち明ける場は社会のさまざまなところにあります。そこで語られる悩みは、相談者のプライバシーを守るため、慎重に扱う必要があります。相談内容を記録・分析する取り組みもありますが、その経験を個人の秘密を守りながら、より広く社会に生かす余地があると私たちは考えています。

誰かが抱える悩みは、決してその人だけのものとは限りません。同じような悩みを抱える人がいて、ある人の経験や、そこに寄せられた思いが、別の誰かの支えになることもあります。

私たちは、悩みそのものにも、社会で分かち合える価値があると考えています。

ビブリオケアでは、個人の悩みと、それに寄り添うために選ばれた本や思いを、本人の同意を得て、プライバシーを守りながら記録していきます。そして、その知識や経験を社会の共有財産として蓄積し、同じ悩みを抱える人への支えや、地域活動、研究などに生かしていくことを目指します。

誰かが悩みを打ち明け、誰かが自分の「好き」や経験を通じて寄り添う。そこで生まれた思いや知恵を社会の共有財産として育み、次の誰かを支えるセーフティネットへとつなげていく。

私たちは、この取り組みを「ビブリオケア(BiblioCare)」と名づけました。

そして、この考え方は本以外にも広げられます。映画や音楽、スポーツなど、さまざまな「好き」を通じて人と人が寄り添い、その経験を社会に生かしていく。私たちは、その先にある構想を「ファンダムケア(FandomCare)」と呼んでいます。

一人ひとりの「好き」と、誰かの悩みが出会うところから、新しいケアの文化を育てていきます。

本という居場所づくりを。
なぜ本が孤独・孤立対策になるのか

孤独・孤立は、いまや世界共通の社会課題です。

WHO(世界保健機関)は2025年、世界のおよそ6人に1人が孤独を感じていると報告し、人とのつながりが健康や幸福にとって重要であることを訴えています。

日本でも、内閣府が2025年に実施した全国調査では、約4割の人が程度の差はあれ孤独を感じていると回答しました。また、政府の世論調査では、48.7%が孤独や孤立を身近な問題だと感じています。

SNSなど、人とつながる手段は増えました。しかし、つながる手段があることと、誰かとのつながりを実感できることは、必ずしも同じではありません。孤独・孤立は、特定の誰かだけではなく、誰にでも起こり得る問題です。

こうした状況を受け、世界各国で人と人とのつながりを育む取り組みが進められています。日本でも政府が孤独・孤立対策を推進し、地域の居場所づくりや、日常のなかでの緩やかなつながりが重視されています。

孤独・孤立への対策として、いま求められているのは、専門的な支援だけではありません。日常のなかで、誰かを気にかけ、互いに寄り添える関係を育むことも大切です。

私たちは、そのきっかけとして「本」に着目しています。

たとえば、誰かに悩みを打ち明けたとき、その人が自分のために一生懸命考え、一冊の本を選んでくれたとしたら。

それは、心を込めて選ばれたプレゼントを受け取るような体験です。たとえ、その本をまだ読んでいなくても、自分のことを思い、時間をかけてくれた人がいる。その事実だけで、心が少し軽くなることもあるのではないでしょうか。

一方、本を選ぶ人にとっても、「この本が好き」「この本を届けたい」という純粋な気持ちが、誰かに寄り添うきっかけになります。誰かを助けなければという義務感ではなく、本への愛情が自然とケアにつながっていくんです。

そして、その思いやりは一人だけのものではありません。誰かの悩みに寄り添って選ばれた本と、そこに込められた思いを記録し、共有することで、同じような悩みを抱える、まだ出会ったことのない誰かにも届けられます。

本を選ぶ人も、選んでもらう人も、そしてその記録に出会う人も。誰もが支え合う輪の一部になれる。

一冊の本に込められた誰かへの思いやりを、世界中にちりばめていく。

それが、ビブリオケアの目指す、本を通じた孤独・孤立対策です。

あなたの「好き」が、
誰かのセーフティネットになる

本には、目に見えない不思議なチカラがあります。

ページをめくることで、行き場のない孤独がふっと和らいだり、誰にも言えなかった痛みに名前をもらえたりする。視点を変えてくれる言葉や、不安な気持ちを掬い取る言葉と出会い、一歩踏みだす勇気をもらえたりする。本が好きな人ならば、誰もがその不思議なチカラを知っているのではないでしょうか?

私はこれまでそんな本のチカラで生きづらさに寄り添えたらと「ブックセラピスト」として、本と人をつなぐ活動をしてきました。

そもそも「ブックセラピー(ビブリオセラピー)」とは、1910年代のアメリカで誕生した歴史ある概念です。第一次世界大戦で傷ついた兵士の心を癒やすために病院の図書館で用いられたのを機に、心理療法の一つとして世界中に広がりました。

しかし、こうした本による寄り添いを広げようと様々な場所へ赴くたび、私はある違和感を覚えるようになりました。それは、「専門家」としての距離感です。

セラピストを名乗る以上、それは仕方がないことなのかもしれません。けれど、誰にとっても身近な「本」という媒体を用いていながらも、ブックセラピストを名乗ることで、ハードルが上がってしまうことを感じました。

もちろん、専門家のチカラも不可欠です。ですが、専門家による「治療」にすべてを委ねるのではなく、誰もがフラットに、日常のなかで「ケアし、ケアされる」生活者同士のつながりがある社会のほうが、ずっと生きやすいのではないかと思うのです。

今、日本政府の孤独・孤立対策においても、特別な資格を持たない一般市民が身近な人に声をかけて寄り添う「つながりサポーター」という役割が推奨されています。私たちが提案する活動は、まさに「本」を介して、誰もが自然にこのサポーターとしての役割を担い合える仕組みでもあります。

地域や人々の暮らしの中で心を癒やす「ケア」という土台を日本につくりたい。そう気づいたとき、「ビブリオケア(BiblioCare)」という概念の提唱が必要だと思いました。

予防医療やウェルビーイングが叫ばれるこの時代だからこそ、この言葉を提唱することに大きな意味があると思っています。誰もが無理なく支え合える「本による社会的処方」の輪を、ここ日本から世界へ広げていきたいと願っています。

泉山衿花
ビブリオケア提唱者 / 選書家
本を介して市民同士が支え合う新概念「ビブリオケア」提唱者。世界的に深刻な健康脅威として議論される「孤独・孤立問題」に対し、誰もが身近にある「本」を媒介にして支え合う新しいケアの形を提案している。

2021年よりブックイベント「選書会」主宰、2022年よりWebサイト「BOOPY」を運営し、累計150件以上の悩みに本を厳選・処方。この他、誰もが選書家になれる私設図書室「HONKE」の運営をはじめ、働く人の悩みに寄り添うオフィス選書、ひきこもり状態にある方への伴走支援など、本を通じて誰もが対等に寄り添い合える場を展開。自身が救われた原体験をチカラに、誰もがケアの担い手になれる環境を全国へ広げている。

「選書会」という
新しい読書会

ビブリオケアを実際に体験・実践できる場として、私たちが提案しているのが本でケアすブックイベント「選書会」です。 「誰かのリアルな悩み」をテーマに設定し、参加者がその悩みに寄り添う本を持ち寄る、「思いやりの読書イベント」です。本書では「選書会」の進行方法なども解説しています。

① 悩みを集める・テーマを設定する

恋愛や仕事、人生の行き詰まりなど、日々寄せられる具体的な「誰かの悩み」を受け取り、それを選書のテーマに設定します。悩みがあるということは、希望を持っているということ。その希望を応援することからスタートします。

② 悩みに寄り添い、本を選ぶ

設定されたテーマ(悩み)に対し、その心を和らげたり、勇気づけたりするような本を思い思いに選びます。本のジャンルに制限はありません。「この本なら寄り添えるかもしれない」というあなたの熱量と優しさが大切です。

③ 対話を意識して本を紹介し合う

持ち寄った本を1〜5分程度で紹介し合った後、参加者全員でディスカッションを行います。ここでは「人の意見を否定しないこと」が絶対のルール。最良の1冊を決めるのではなく、すべての本がその人の悩みに寄り添う処方箋であるという前提で、温かな「対話」を重視します。

④ 選書内容を共有する

当日選ばれた本や対話の内容は、公式サイト(BOOPY)や個人のSNSを通じて発信・共有します。あなたが選んだ本のチカラが会場を飛び越え、同じ悩みを抱える見知らぬ誰かの心を救う「セーフティネット」へと広がっていきます。

ビブリオケア〜見えない孤独を本で溶かす方法〜

「本が好き」という純粋な想いが、誰かの心を救う処方箋になる。 専門家も資格もいらない。日本発・本による社会的処方のすべてがわかる一冊!

現在、日本人の約4割が孤独感を抱えて生活していると言われています。この深刻な社会課題に対し、政府は特別な資格がなくても身近な人に声をかけ、寄り添う一般市民「つながりサポーター」の養成・普及を推進しています。

本書は、この「つながりサポーター」の理念を「本」を通じて体現し、いま次世代の社会的処方として関心を集めている新しいケアの形「ビブリオケア(BiblioCare)」の全貌をまとめた初の解説書です。

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